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もっと鹿児島が知りたい[8]さつま刀豆(ナタマメ)の話

ナマタメ鹿児島県鹿児島郡吉田町では刀豆(ナタマメ)の大規模な栽培が行われ、さつまナタマメの名前で新しい鹿児島の特産品として、健康食品紹介雑誌などで注目されています。

ナタマメってどんな豆?

ナタマメは中国伝来の豆科の蔓性1年草で、東南アジアの熱帯・温帯地方が原産地で古くから栽培されていました。生命力が強靭で、私達が野菜として食するエンドウマメより葉も豆を包むサヤも大きく、サヤは10~30cmにもなります。扁平のサヤは中国の青龍刀に形が似ていて、刀・鉈(なた)を連想させることから刀豆(とうず、ナタマメ)の名がつきました。

タバコの箱とナタマメのサヤを比べてみてください タバコの箱とナタマメのサヤを比べてみてください 現在は紙巻タバコ全盛時代ですが、昔は刻み煙草をキセルで吸っていたもので、そのキセルの中でナタマメの形に似た延べ打ちのものを「なたまめ煙管(なたまめぎせる)」と言ったくらいですから、昔からナタマメの存在はかなりポピュラーであったと推測できます。

ナタマメは4月初旬に種を蒔き、6月頃に赤・白色の花が咲き、秋に豆(種子)・サヤを収穫します。

滋味が非常に豊かで、若いサヤは漬物に、葉や蔓は家畜の飼料や緑肥(葉・茎が鮮緑のままに他の植物栽培の耕土に施されて栄養とされる。レンゲソウ、アブラナ、クローバーなど)として利用され、豆(種子)は食用とされます。豆の色は白みがかった鮮やかな赤色で、食用といっても料理に使われるのではなく、朝鮮人参同様、健康食品の原料となります。

ナタマメは有機農法で露地栽培されますナタマメは有機農法で露地栽培されます良い豆を育てるには若いサヤのうちに「間引き」が必要で、その間引いたサヤは漬物にされます。薬効の強い豆を収穫した後の枯れたサヤや蔓も、煎じて健康茶の原料になります。ナタマメは無駄になるところがないのです。薬効ですが、ナタマメは良質のたんぱく質、サポニン、鉄分、ミネラル、ビタミン、ポリフェノール、良質の食物繊維等を含んでいて、腎臓機能・腸管の働きを活性させ、免疫力を高めます。体内の老廃物や有害物質を体外に排出する作用や、老化防止・生活習慣病の予防にも優れていることが分かっています。

また、花が絶えることなく咲くことから、強靭な生命力を子孫繁栄・家内繁盛の縁起物としたり、蔓が伸びて元に戻ってくることから、旅立ちや出征の家族の無事帰還の縁起物としたと伝えられています。

吉田町のナタマメ

ナタマメは中国では揚子江(長江)流域の温暖な気候・滋味豊かな土壌で広く栽培され、漢方薬剤として用いられてきました。ナタマメが栽培される揚子江流域は北緯31~32度で、日本では九州南端の鹿児島県域が同緯度にあたります。

日本には江戸時代の初めに伝来し、九州・四国・中国地方の西日本一帯で栽培が定着しました。以来、これらの地方では薬効の強い豆(種子)の収穫を目的とするのではなく、ナタマメを若いサヤのうちに収穫し漬物にして食するようになりました。

現在、ナタマメの大規模栽培が行われている鹿児島郡吉田町の農家でも、かつてはサヤを自家用の漬物として収穫していました。一般に、健康食品としてのナタマメの豆栽培(種子の収穫)は中国で行われていて、この豆を輸入して粒状に加工したり、焙煎してお茶にしていました。

南日本新聞掲載南日本新聞掲載 2001年(平成13年)8月25日近年、吉田町では町おこし事業の一つとしてナタマメの栽培を盛んにし、サヤを漬物に、豆を健康食品に、蔓や葉を健康茶に加工して販売するようになりました。鹿児島県は気候が温暖のうえ、土地は火山灰が積もったシラス台地であるため土壌は水はけが良いのが特徴で、火山の噴出によって出来上がった土壌ですからミネラル分も豊富で、野菜栽培に適しています。中でも吉田町西佐多浦地区は約20万年前の海底が隆起した土地で、吉田貝層といわれる地層となっています。この太古の魚類・海草・貝殻などの海底堆積物が滋味豊かな土壌を作り上げていて、ナタマメの栽培に最適な土地となっています。吉田町産のナタマメはサヤの長さが50cm以上にもなり、赤色の良質の豆が収穫できます。この豆は「さつま刀豆」と命名され、鹿児島特産の健康食品として注目されています。


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